「自炊支援倶楽部」の立ち上げは、設計、開発、デザインを全て僕が一人でやりました。
なぜかというと、やってみたかったから。
そして、「一人でできるもんなんだよ、みんなもやろうよ!」と、言いたかったから。
他の仕事も忙しく、「自炊代行Webサービス」のサイト作りにとりかかれたのは2010年の大晦日だった。
Facebookで「お前がやるんだろ!」と言われた時は、ECのASPサービスあたりを使えばいいや、と軽く考えていた。
しかし、よくよくサービスプロセスを考えてみると、普通のECでは対応できないような気がしてきた。
①データを送る必要がある
「書籍スキャン代金」を商品として販売する、という仕組みは一般的なECのシステムで作ることができそうだ。
でも、今回の「自炊代行Webサービス」ではリアルの商品発送は無く、スキャンしたデータを、インターネットを介してユーザーに送り届ける事になる。
そんな機能は一般的なECには無い。
②ダウンロード販売とは違う
世の中にはコンテンツダウンロード販売というものがある。
ソフトウェアや音楽データ、着メロや壁紙画像などのECで使われている仕組みだ。iTunes Music StoreやApp Storeなどがわかりやすい例だ。
調べてみると、EC CUBEやzen cartにはコンテンツダウンロード販売の機能があるようだ。
早速zen cartを自分のサーバーにインストールしてみるが、ちょっと違う。
ダウンロード販売は、決済後に「あらかじめ」サーバーに保存されていたデータをユーザーがダウンロードできるようになる機能だ。
自炊代行Webサービスは、後日送られてきた書籍をスキャンしてデータ化するものなので、「あらかじめ」データを準備できない。
③パッケージは多機能すぎる
そうなってくると、オープンソースのECパッケージをカスタマイズして作るしかなくなる。
でも、カスタマイズするにしても、ECパッケージは多機能すぎる。
自炊代行Webサービスは、ECシステム的にはとてもシンプルで、あまり複雑な機能はいらない。
商品は一つだけ、「書籍のスキャン」しかない。さらに在庫管理も不要だし、データ納品なので発送管理も必要がない。
パッケージベースでカスタマイズするには「削る機能」が多すぎる。
カスタマイズする場所を見つけるだけでも時間がかかるし、バグも発生しやすい。
ここで「フルスクラッチ」したほうがいいのではないか、という結論に至った。
皆さんご存知の通り、フルスクラッチとは全く新規にシステムを開発することだ。
そんな複雑なシステムではないとはいえ、自炊代行Webの仕組みをフルスクラッチとなると、50万や100万じゃ作れないだろう。もっとかかる。
でも、このサービスの商品単価は150円。1冊の裁断、スキャンに10分ぐらいかかる。100万以上の投資を改修するのはカンタンではない。
考え始めた初日から暗礁に乗り上げた。
暗礁に乗り上げ、一人うめいていたら、娘が「どっか行きたーい!」と飛びついてきた。
大晦日だし、年越しそばと正月の食材でも買いにいくか、と品川シーサイドのイオンへ向かった。
娘が本屋に行きたいというので、イオン内の未来屋書店に向かう。
しばらく子供の本を見て、さてエビ天買わないと、エビ天・・・と本屋を出ようとしたのだが。
ふとIT関連書籍コーナーに戻って、プログラム開発関連の本を見てみる。
「PHPとMySQLによるECサイトの作り方」みたいな本がいくつかあった。
開発会社にフルスクラッチを依頼する金は無い。
だからと言って、こんな本を一冊読んだだけで、僕が一人フルスクラッチで作るスキルが突然身に付くとは思えない。
エビ天入りの年越しそばを食べた後の大晦日の深夜、僕は一人「PHPとMySQLによるECサイトの作り方」みたいな本を読みながらMacBookに向かっていた。
あきらめたらだめだ。僕がスクラッチで作るしか無い、と決心した。
元旦は実家に行って飲んだくれて何もできなかったが、1月2日、3日にちょっと頑張った結果、自炊Webサービスの原型ができあがってしまった。
この時点で出来上がった機能は、
・ 会員登録とログインの仕組み
・ 商品をカートに入れて、購入ボタンを押すと購入データベースに入れる仕組み
ここまで。
つまり、決済関連と、データをユーザーに送る仕組みは作っていない。
また、デザインもhtmlだけで書いていて、ひどいものだった。
それでも、3が日でここまでできてしまった。
これが1月3日バージョンの画面。
ファイル名変更、OCRがオプションで、合計250円の価格計算だったが、公開時には全てコミで150円となった。
このチェックボックスをクリックするオプションが加算されてDBに保存される機能も結構苦労して作ったのだが、お蔵入りとなった。
このあと、作ったプログラムをWordpress上で動くようにして、PayPalによる決済機能とマイページによるダウンロード機能を追加し、最終的には6月にサイト公開をするまで、全部一人で開発した。
「優秀なプログラマーがいないから新サービスが作れない」
「要件定義や設計が悪いからいいサービスが作れない」
よく聞くプランナーやプログラマーのいい訳だ。
そんなことを言っていたら駄目なのだ。
すごい事を考えられるなら、自分で作ればいい。
作る腕を持っているのなら、作ればいい。
今回、この「Webサービスを立ち上げてみた」という記事を書いている理由がここ。みんな、自分でサービスや事業を立ち上げればいいんだ。
僕も今まで色々なものを作ってきたし、これからも作っていく。
若い人たちも、躊躇せずに踏み出してほしい。